ちょっと珍しい、フラショのバッハを聴いてレビューを書いてみました。
レコードの詳細は、こちらをご覧ください。
バッハ《無伴奏チェロ組曲》は、チェリストにとって究極の挑戦であり、演奏家の個性が最も色濃く反映される作品として知られています。
そのなかでも、アルゼンチン生まれの**レーヌ・フラショ(Reine Flachot, 1922–1998)**によるこの1972年録音(独Intercord 2LP)は、歴史的にも音楽的にも特筆すべき一枚です。
まず録音の位置づけとして、フラショは女性チェリストとして3人目にこの全集を録音した先駆者にあたります。
演奏スタイルの特色としては、フランスの典型的なチェロ奏法に根ざす「透明で明るい音色と洗練された表現」が顕著です。その演奏は軽やかさを保ちながらもリズムは引き締まり、テンポは比較的速めで推進力があり、全体に「舞曲的軽快さ」と「クリアなアーティキュレーション」が際立っています。
他のチェリストの重厚かつ瞑想的な解釈とは対照的で、例えば第3組曲の躍動感や第6組曲における明朗なエネルギーには、フラショ独自の魅力が随所に表れています。
ディスコグラフィ上も注目です。オリジナルは1972年にIntercordからリリースされましたが(このLP)、後にSaphirによる再発も存在します。
しかしながら、オリジナル盤の現存数はごく限られ、中古市場では滅多に出回らず、コレクターズ・アイテムとして極めて希少です。そのため、当店での入荷は大変珍しく、実物を手に入れるチャンスは極めて稀と言えるでしょう。